--世に母の愛情ほどやさしく強く崇高なものはない--長い間女手一つで育て上げたふさの長男浩一は恩師の令嬢敬子と結婚し、産婦人科医院を開業し、ふさのホッと一息したのも束の間だった。次男の雄二はふさの疎開中にすっかり手のつけられぬ不良青年となっていた。雄二はアパートに十も年上のダンサー千代子と同棲し、そ
--世に母の愛情ほどやさしく強く崇高なものはない--長い間女手一つで育て上げたふさの長男浩一は恩師の令嬢敬子と結婚し、産婦人科医院を開業し、ふさのホッと一息したのも束の間だった。次男の雄二はふさの疎開中にすっかり手のつけられぬ不良青年となっていた。雄二はアパートに十も年上のダンサー千代子と同棲し、それにあき足らずレヴューガールのみさ子までも妊娠させていたのだ。それを知ったふさの悲しみ。雄二は何一つ希望のないその日その日を千代子によりかかり、だれた生活を続けていた。そのためみさ子の子供も、みさ子のよい父になってくれと頼むのをしり目に、堕胎させることにばかり窮余の策をねっていた。ふさはみさ子の純情を知り、嫁としてみさ子を迎えるためにヤミ屋の安田に千代子との別れ話を一任した。しかし安田の求めるものは人の幸福ではなく第一に己の懐を肥すことだったのだ。ふさは母...
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